
10-16-2013, 01:13 AM
|
 |
Junior Member
|
|
Join Date: Sep 2013
Posts: 19
|
|
Pugpqwegaq
Ibgyuajid
一 幕府がペリー提督の思惑通りに開国させられたのは外交交渉の経験のなさ故だ。幕府は黒船の大砲の脅威の前 に渋々開国を許した。だが、交渉人の能力が優れていれば必ずしも力の強い国が勝つとは限らない。琉球は黒船 の脅威をものともせず主権を貫く立派な条約締結を成し遂げたからだ。
午七月 「木下って、四中にいた一個上の人か」と弘樹。
[#ここで字下げ終わり] こうしてベッテルハイムは不法滞在記録を更新して琉球を去った。イリノイ州に居を構えたベッテルハイムは 米国籍を取得し、その後|勃発《ぼっぱつ》する南北戦争に北軍の軍医として従軍した。
五日間の奉祝が終った翌朝、東京の街角には各所に「祝ひ終つた さあ働かう! 大政翼賛会」という看板が 立てられた。このとき人人は祭りのあいだの夢見心地から、果たして本当に現実のなかへ立戻ったのだろうか— —。翌年八月の新聞は、箱根で行なわれた大政翼賛会中央訓練所の第一回特別修練会で、元拓務大臣の小磯国昭 大将らとともに、作家の中村武羅夫、横光利一、瀧井孝作氏らが、�みそぎ�錬成に入っていることを伝えた。 |禊《みそぎ》は白衣をまとった身を川で洗い清めて、神人合一の境地を求めるためのものであるという。「人 間の業が神の業に移らうとするときは、|蓋《けだ》し人間として甚だ危険な時である」というのは、棟方志功 に対する恩地孝四郎の評言であったけれども、新感覚派文学の旗手も、神人合一の境地を、合掌して現実に求め 始めていたのである。神|憑《がか》りになりかけていたのは、むろん横光氏だけではなかった。科学的な根拠 を持たない「紀元二千六百年」が国民大多数の一致によって公認され、神話と歴史、夢想と現実の|区別《けじ め》が完全に見失われた昭和十五年を境目に、大日本帝国の忠良なる臣民は、共通の幻想を追う「一億一心」の 大集団となって、「夢応の鯉魚」のように、やがて全員が俎上の魚となる運命にむかって走り出し ていたのだ。 「ごめんなさい。勝手に見たりして」小室は恐縮して頭を下げた。「でも、夜中に忍びこんで見たとか、そんな 凄い話じゃないんですよ。あの会社、ずさんだから、事務室の棚に差してあるだけなんですよ。『パート履歴書 』って背書きまでしてあって。それを拝借してトイレで見させてもらったんです。気に障《さわ》ったらお許し ください」
ポケットからハンカチを取りだし、ロックを解除してドアを開ける。開けながら、包帯で巻いてあるから指紋 は残っていないだろうと思った。目の前は非常階段で、下まで続いている。デッキに立った。東の空にはすでに 夜明けの気配があり、町並の黒い稜線が藍色に変わろうとしていた。 気が動転した寧温は、暗シン御門から真鶴になって真美那の許《もと》に怒鳴り込んだ。
いや、でも、もう一人いた気がする——。恭子の頭の中で別の記憶が瞬いた。男に刃物を向けられた。首根っ こを押さえられた。あれは九野ではなかった。 那覇港から船が今日も旅立って行く。明はあの船のように世界中を自由に渡ってみたかった。
|