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「そうだ。それでこそぼくの妹だ。ペリー提督を追い払った最強の妹だ……」 　茂則が刑事たちから解放されたのは、医師が間に入ってくれたからだ。「安定剤を飲んでますから寝かせてあ げてください」そう言って、茂則を病室へと連れていったのだ。夫婦の会話はほとんどできなかった。茂則は、 薬のせいなのか足どりもおぼつかなく、ベッドに横になるなり瞼《まぶた》を閉じた。弱々しい夫の姿を見て、 あらためてショックを受けた。
「あそこにいるのは孫寧温です」 　長い影が砕氷船のように、アスファルトの上を突き進んでいく。
「ジュリに溺《おぼ》れた男は死ぬまで金を毟《むし》り取られるのが常さ」 book1
「なんだ、九野。呼んでないぞ」 　男が目を丸くする。慌てて「これも念のためですから」と付け加えた。
「いいから答えろ。寺田洋平を自首させたのはおまえか」 「なんだ。だから来たのか」
「多摩店ってスマイルの本店だっけ」恭子はお茶のおかわりをついだ。 　おなじころ、十年まえからの知己である料治熊太は、一緒に本郷の通りを歩いていて、ふと志功が大切そうに 提げている風呂敷包みの中身を訊ねた。