
10-07-2013, 01:35 AM
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Xyd
Xooivxzpv
「こわれちゃう!」
「五時にレンタカー会社に行く。これはどう説明する」 私は会社の中を見回した。前よりも、どこか寒々として見える。——こんなものさ。どうせ他人の集まりなん だ……。
「柴《しば》田《た》です。西島とは同期で……」 カムイワッカ行きのバスはウトロから乗り込んできた学生たちでいっぱいだった。カムイワッカの温泉は滝の 上にあり、そこまで急傾斜の谷を登らなければならないので年寄りには無理なのだ。バスは知床の西海岸沿いを 走り続ける。原生林と海のほかは何もない。人家はもちろん、ドライブインも広告塔もない。窓の外は海の青と 林の緑だけ。ときどき道路にキタキツネがあらわれると、運転手が気をきかせてバスを停めてくれる。キタキツ ネは人間の姿が見えると隠れてしまうものかと思っていたが、なかなかのひょうきん者が多く、バスの窓からカ メラをかまえる観光客にポーズをとったりする。
(俺みたいに逃げて来た奴も、いるのかな) あの書類の封筒! コピー会社へ持って行くのをコロリと忘《わす》れ、しかも——どこへ行っ たんだろう?
ドアがノックされて、安西紀子が入って来た。 「あなたには、西丸三香子さんという恋人がいるのに」
「分らないの」 「それが、俺のせいかね」
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